瑞穂雅樂會の三田徳明主席は、2004年ソウルで行われた国際学術会議で日本雅楽の国際的重要性を紹介して以来、韓國藝術綜合學校(大学)との共同作業を進め、2005年にはその中間発表と位置づけした『高麗楽シンポジウム』をソウルの韓国芸術総合大学と、東京の学習院大学で実施した。
またこれと同時に三田徳明主席は2005年度、韓国芸術総合大学の招聘講師を務め、テレビ会議システムを利用した世界初の雅楽オンライン舞踊レッスンを実現した。
これはソウルの同大学と東京の瑞穂雅樂會を結んでの一月に6日の遠隔レッスンと、月2日間のソウルでの直接指導を繰り返す事業であり、2005年12月には学部生・院生による講座修了公演も実施された。
そして2006年、三田主席は韓国芸術総合大学の招聘教授として招かれ、高麗楽舞楽の朝鮮半島への里帰り事業をソウルで継続的・本格的に実施している。
また、主席は同時に世界民族舞踊研究所の仕事もされている。
一学年に数名の学生しか採用しない(舞踊学科)同学にあって、三田教授の学部レッスンは23名の履修者を集めている。
受講者は舞踊学科のみならず、音楽学科からも集まっているのだ。
そのため同クラスでは「納曾利」の舞と同時に篳篥(ひちりき)演奏も指導しているそうだ。
周囲はこの状況を驚きをもって見ているようだ。
三田徳明招聘教授は語る
ここ数年「千数百年ぶりの高麗楽の里帰り事業」を進めてきましたが、
そもそも古代朝鮮の舞踊が日本雅楽の中に残っていることは、韓国
では専門家にさえもほとんど知られていないのです。
学生の認識も当初は中途半端なものでしたが、レッスン時に私が話す
内容には一様に驚くようですね。
雅楽のフィルターを通してアジアを見ることにより、古代にアジアを
通貫する文化があったこと、そして今なお日本には生きた舞踊として
アジア古代文化が伝承され続けていることに自ずと気付くはずです。
多くの学生が受講してくれて、アジアの中で日本雅楽が持ち得る普遍的
価値に気付いてくれる事は、指導する私にとってのみならず、日韓をはじ
めアジアの将来にとっても非常に喜ばしいことです。
そのことが新たな時代におけるアジア諸国の共同・協調・連帯の、歴史
的・文化的・精神的支えとなり得ると信じるからです。
日本からひとたび半島に出てみると、日本にいては気づかない、様々な
ことがわかってくるものです。
現在の私が単身赴任でソウルに滞在しているのため7歳になる娘は寂し
がっているようですが、彼女も大きくなれば今年のパパの仕事の意味を
理解すると思います。
パパとしての三田主席は、ほとんど毎晩、メッセンジャーとwebカメラでお嬢様
や奥様とお話されてるとのこと。
日韓間には時差が無いので快適だそうだ。
三田主席は今年いっぱい、韓国芸術総合大学で学部の「伝統舞踊」「東洋
舞踊史」、大学院の「伝統舞踊ワークショップ」「フィールドワーク」を担当され
ている。
主席がいつもおっしゃっておいでの「雅楽でつなぐアジアの絆」。
朝鮮半島(韓国では「韓半島」と言うそう)を起点に、ますます深まっていくと
すばらしいだろうし、三田主席の指揮のもと、瑞穂雅樂會はその責任を負っ
ているのだと、あらためて感じずにはいられない。
↑韓国で最古の舞踊「チョヨンム」の面をもつ三田主席。 韓国古典舞踊研究者との共同研究も進んでゆく。